2ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第19話

54 :1/5:2010/07/18(日) 15:49:59 ID:qs8XkVSU0
「どうしたの、優雨。さっきから全然食べていないじゃない」

卒業も間近に控えた、2月のある日。毎日のように繰り返してきた寮の朝食の
風景が、しかしこの日ばかりは少し様子が違っていた。優雨がまったく朝食に手を
つけないのだ。いくら虚弱な体とはいえ、こんなふうに食事を摂らないということは
今までにはなかった。それどころか彼女の顔色は、なにかに怯えるような表情さえ
浮かべていて――それが見たところ、彼女が心を開いているはずの千早に対して
向けられているものだから、寮生の誰もが皆、首を傾げるばかりだった。
「優雨、私に何か言いたい事があるの?」
 千早は優雨を怖がらせないよう、いつにも増して穏やかな口調でそう問いかけた。
優雨の顔がふっ、と伏せられる。しかしそれも僅かのこと。すぐに何かを決心した
ように顔を持ち上げると、優雨ははっきりとした口調で、こんな事を口にした。
「ちはやと、かおるこ。もう仲直りはした?」
「えぇっ?!」

55 :2/5:2010/07/18(日) 15:50:49 ID:qs8XkVSU0
優雨の言葉に、誰よりも先に驚きの言葉を上げたのは薫子だった。まさか自分の
名前が出てくるとは思わなかったのだろう。そして何より彼女には千早と喧嘩をした
憶えなどなかった。数週間前の出来事で、千早と“親密な関係”になって以来、
喧嘩らしい喧嘩はおろか、文句の一つだって言った事はない。
典型的な、絵に描いたような、どうしようもないほどに、バカップル。
そんな千早と薫子だからこそ、優雨の言葉は寝耳に水だった。普段は頭の回転が
速い千早も、この時ばかりは優雨の言葉の意味を探るのに、難しそうな表情を隠しはしなかった。
「私たちの事が気がかりで、食事も喉を通らなかったのね。
 でもね優雨、私と薫子さんは、別に喧嘩なんてしていないわよ」
「そうなの?」
「優雨はいったい、私たちのどんな様子を見て、
 喧嘩をしているなんて思ったのかしら?」

56 :3/5:2010/07/18(日) 15:51:47 ID:qs8XkVSU0
とりあえず自分たちは仲違いなどしていない、ということを千早は優雨に
言って聞かせた。だが肝心の優雨は、まだ少し納得のできていないといった顔を
している。これは本人に直接事情を訊いた方が早いだろうと思い、千早は優雨に問いかけた。
「きのうの夜ね、ちはやのお部屋にいったの。おべんきょう、
 どうしてもわからないところがあって、おしえてもらおうと思って。
 はつね、もうおやすみしていたから」
「ゆ、優雨ちゃん……」
初音が露骨に残念そうな顔をしてため息をつく。香織里がまぁまぁと言って
慰めるも、ほとんど茶化しているのも同然だった。
「ちはやのお部屋の前までいったらね、中からちはやと、かおるこの声がきこえてきたの。
 なんだか、へんなかんじのこえだった。
 あん、とか、いい、とか。それでね、わたし気になったから、
 ノックしたんだけれど、お返事なくって。
 入ってもいいのかなって、思って、ドアを――「うわーーっ!!」
優雨が言い切る前に、薫子の大声がそれを無理矢理に遮った。
ここまで状況を事細かに説明されて、思い当たる節がない二人ではなかった。
――ああ、そう言えばいつもは抑えているのに、昨日は随分と千早が頑張るものだからつい大きな声で、と。
昨晩の情事を思い出し、薫子は瞬く間に頬を紅潮させてそれきり何も言えなくなってしまった。
これはもしかすると非常によろしくない状況なのではないか、
いやいや、こんな時こそ千早が! 男がしっかりするべきだ! 都合の良い思考が
彼女の脳内を駆け巡る。一糸の打開策を求めて、薫子は千早の方に目を向ける。

そこには世界が終わってしまったかのような表情を浮かべる恋人の姿があった。

57 :4/5:2010/07/18(日) 16:03:55 ID:qs8XkVSU0
「ちはや、ひどい。かおるこくるしそうにしてた」
「ゆ、優雨、それはね、だから、えぇと、あの、」
「かおるこにあやまって、ちはや」
よりによって、何故優雨に。ある意味全校生徒に正体が発覚すること以上に、
優雨に行為を覗かれていたことの方が致命的な精神ダメージだった。何か途轍もなく
大きな喪失感が千早を襲う。真っ白に燃え尽きた男がそこにいた。元々白の目立つ人ではあったが。
「……優雨ちゃん」
そんな風に優雨に責められ魂を手放しかけていた千早に、救いの手を差し伸べたのは
意外な人であった。他でもない優雨の姉、初音である。諭すような口調で優雨を
振り向かせると、その目を真っ直ぐに見つめながら、こう言った。
「優雨ちゃんが見ていたのはね、喧嘩の場面じゃないの。
 むしろ、とても仲良くしているところだったんじゃないかなぁ」
「……そうなのかな」
「うん。何も知らなかった優雨ちゃんが勘違いしちゃったのも仕方ない事だけれど、
 でも昨日見たことは絶対に喧嘩なんかじゃないから安心して。ね?」

58 :5/5:2010/07/18(日) 16:09:22 ID:qs8XkVSU0
初音の言葉に、ようやく優雨はある程度納得をしたようだった。
「わかった」と小さく呟くと、あとはもうすっかりいつもの調子を取り戻したようだった。
「さ、時間もないことですし、皆もう朝ごはんにしちゃいましょう」
「そ、そーですねー! 特にエルダーのお姉さま方は昨日の今日で
 お腹も空いてらっしゃることでしょうし!」
「陽向、追い討ちをかけるのは止めなさい。ただでさえ白い千早がもっと白くなってしまうじゃない」
とりあえずは落ち着きを取り戻したらしい、嵐のような一時をどうにかやり過ごし、
薫子はようやく安堵のため息を吐き出した。まったく初音の助け舟がなかったら
どうなっていたことか、優雨にあれこれと追求されていたら、顔から火が出た挙句に
人体発火で死んでしまうところだった。
「た、助かったよ、はつ……、ね……?」
お礼を言おうと、薫子は初音の方へと振り返る。
――そこで薫子の思考回路は再度停止命令を喰らって凍結した。

今まで見たこともないような、初音の満面の笑顔。
と、その後ろに燃え盛るどす黒い色の……


「千早ちゃん。薫子ちゃん。ご飯を食べたら、ちょ〜っとだけお話がありますから。
 あとで私の部屋に絶対来てくださいね♪」


その日、ダブル・エルダーは二人仲良く学校を欠席した。




501 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.03.00 2017/10/01 Mango Mangüé ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)