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処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第19話

478 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:43:12 ID:Dmbomvna0
「二人だけの誕生日会」最終話



瑞穂「ふふっ……少し話が逸れてしまったわね。奏ちゃんの誕生日プレゼントについて……だったわよね。」
薫子「あ…は、はい」

瑞穂「ちなみに、薫子ちゃんは今の時点では何か思いついていることはあるの?」
薫子「え…あ、あの……」

ありきたりとバカにされるかもしれない、今時ケーキだけと笑われるかもしれない、そんな思いも頭によぎったが、すぐさまかぶりを振った。
瑞穂さんだったら、絶対にバカにしたり、笑ったりなんかしない。
意を決して口を開いた

薫子「月並みですが……小さなケーキと蝋燭を買って、二人だけでお祝いをしようかな……と」
瑞穂「ケーキ……いいんじゃないかしら?でも、薫子ちゃんとしては、ケーキじゃ物足り…と思っているのね」
薫子「はい…。奏お姉さまには、いつもお世話になってますから……。ケーキだけじゃ味気ないかな…って………
   でも、豪華なモノとかは好みじゃなさそうですし。かといって…カワイイ物とかっていうのは…私、よく分からなくて……
   服だって、私の持っている可愛いのは、全部奏お姉さまに見立ててもらったモノですから……」
瑞穂「なるほど……」

確かに奏ちゃんは、高価な物を貰って喜ぶ人じゃない……。
僕としては薫子ちゃんが選んだプレゼントなら、何だって喜んでもらえると思うんだけど。
それを言っても、薫子ちゃん自身は納得いかないんだよね……



479 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:44:56 ID:Dmbomvna0
瑞穂「それじゃあ、こういうのはどうかしら…。たしか……薫子ちゃんは、いつも奏ちゃんにお茶を入れてもらっているのよね?」
薫子「え…は、はい……。妹して情けない話ですが……」
瑞穂「でしたら、奏ちゃんの誕生日には、あなたがお茶を淹れてあげたらどうかしら…?」
薫子「……え?…えぇえぇぇっ!!?」

あまりの提案に、薫子は椅子から立ち上がった。

薫子「いや、あのっ、さっきまでの話、聞いてました!?瑞穂さん!?」
瑞穂「落ち着いて…薫子ちゃん。」
薫子「…………」

しぶしぶと座りなおす。

瑞穂「私もさっき言ったでしょ?薫子ちゃんにはお礼がしたいって…だからね、あなたが困っている様なら、助けてあげたいの……。」

瑞穂「あなたが言いたいことは何となく分かるわ。『お茶を淹れるのも私よりも奏お姉さまの方が上手ですし…』っといった所かしら?」
薫子「う……」

瑞穂「確かにそうかもしれない……でもね、それでも別段構わないのよ。
私だって高級な物をプレゼントするのが真心だとは思わないわ。かといって、相手の好みの物をプレゼントする事だけが誠意だとも思わないわ」

瑞穂「逆に言うと、相手の事を真剣に考えた上で選んだ事だったら、何でもイイ……と思うの。それはつまり…贈り物は別段『モノ』に限る必要はない……と言うことよね?
   例えば由佳里ちゃんのように……」

薫子「あっ……」


480 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:47:32 ID:ZNFi5PaZ0
支援

481 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:49:52 ID:Dmbomvna0
――そうだった、由佳里さんは別段、奏お姉さまにプレゼントを挙げたわけじゃない……
  だけど、由佳里さんのやった事は、プレゼントを挙げる事なんかよりも、ずっと
  奏お姉さまを喜ばせてあげることができた……。――

瑞穂「……わかったかしら?」
薫子「…はい」
瑞穂「要は、いかに心を込めて相手の事を祝ってあげるか……と云うことが肝心だと思うの……。別段、上手にする必要はないわ……あなたはあなたのままで、精一杯……奏ちゃんのお世話してあげなさい。
きっと……それが何よりのプレゼントになると思うわ」
薫子「はいっ」

薫子の声に、迷いは無かった…。

薫子「瑞穂さん…。その…ありがとうございます。」
瑞穂「いいのよ、別に…。何度も言うように、私の方こそ、あなたにお礼をしたかったの。それに、本当に大変なのはこれからよ?奏ちゃんの誕生日まであと1週間……。できるだけ美味しいお茶が淹れられるように頑張らないと……でしょ?」
薫子「あ、あはは…そうですね」
薫子「でも、瑞穂さんにフェンシグを教えてもらった時と比べれば、これぐらい、全然平気ですって」
瑞穂「あら、それだけ言い返すことができたなら大丈夫そうね?」
薫子「はい……頑張ります」
瑞穂「その意気よ。いずれにせよ…あなたは奏ちゃんにお茶を淹れる事になるんですから……。
   下手にプレゼントを何にしよう…って考えてるよりも、少しでも美味しいお茶が淹れれる様に頑張った方がいいわ」
薫子「へ?どうしてですか??」


482 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:52:52 ID:Dmbomvna0
瑞穂「例えばの話ですけど……。仮に薫子ちゃんがケーキと、他に何か可愛らしいヌイグルミをプレゼントしたとするわね?
   ……だとしたら、一緒にケーキを食べる時、いったい誰がお茶を淹れるのかしら?」
薫子「え……あっ!?」

―――か…考えてなかった………。――

瑞穂「ふふふ……その様子だと、考えていなかったようね。」
薫子「ぅぅ……はい」
瑞穂「折角ケーキまで用意したのに、お茶を淹れるのは祝われる人…っていうのは変な話よね?」
薫子「うぅぅ……瑞穂さんって、意外と意地悪なんですね……」
瑞穂「ふふふっ…ごめんなさい」

二人が笑い合っていると、奥の方からガヤガヤと話し声が近づいてきた。

瑞穂「…どうやら終わったようね」
薫子「あ、奏お姉さま!」
奏「薫子ちゃん!?それに瑞穂お姉さままで…」

演劇部員(キャーっ!瑞穂お姉さまよ)
演劇部員(ああ、最後に瑞穂お姉さまにお会いできるなんて…今日は何て素敵な日なんでしょう)

瑞穂「お疲れ様…奏ちゃん。それに緑さんも……とても素敵な舞台だったわ」
緑「いえ、こちらこそ…まさか瑞穂お姉さまに来て頂けるとは思ってもいませんでした…。
  部員たちにとっても、いい意味で気が引き締まって…ありがとうございました」
瑞穂「いいえ…それは、日頃のみなさんの練習の成果です。私がいなくても結果は変わらなかったでしょう」
緑「お姉さまに、そう言って頂けると光栄です。それにしても、どうしてこの時間までココに…?」
瑞穂「薫子ちゃんがね…『奏お姉さまと一緒に帰ります』って言って聞かないものですから…
   私も一緒に待っていることにしました」
薫子「ちょっ…瑞穂さん!?」
奏「薫子ちゃん……ありがとうなのですよ」
薫子「あ…う…」


483 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:57:39 ID:x08FDAmi0
shien

484 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:58:09 ID:Dmbomvna0
奏に抱きしめられると、薫子は赤面して言葉を忘れてしまった…。

緑「ふふ、奏ったら…ほんと、幸せ者なんだから……」

呆れた様な、すこし羨ましそうな目で見ながら緑部長がため息をついた。

緑「ですが、助かりました…。実は、部員のほとんどはご両親が迎えに来てもらったり、駅が近かったりで安心なのですが、
  奏だけが一人で帰ることになっていましたから…
  『騎士の君』だけでなく、瑞穂お姉さまが付いていてくださるなら安心です」
瑞穂「こんな私でもお役に立てれたら幸いです」
緑「いえいえ、ご謙遜を……さて、今日はもう遅いですから…この辺で……」
緑「はい、みんな〜!今日は本当にご苦労様………もう日も暗いから、寄り道しないで早く帰るのよ!」

演劇部員(は〜い)

緑「それでは奏、薫子ちゃん、それに瑞穂お姉さま……御機嫌よう」
奏「御機嫌ようなのです」
瑞穂「御機嫌よう」
薫子「御機嫌よう」
演劇部員(ご機嫌よう、奏お姉さま)
演劇部員(ご機嫌よう)
奏「御機嫌よう、みなさん」

緑部長が別れの挨拶をすると、部員たちは蜘蛛の子を散らすかのように、帰って行った。

瑞穂「さ、私たちも帰りましょうか」
奏・薫子「「はい(なのですよ〜)」」

奏たちも帰路に就くことにした。


485 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 00:59:26 ID:0SHvoI4/0
支援

486 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:02:43 ID:Dmbomvna0
/************* 帰り道 *********************/

瑞穂「コンクール、素晴らしかったわ…。また一段と腕を上げたわね、奏ちゃん」
奏「そ、そうでしょうか……えへへっ、奏、何だか照れるのですよ〜」
薫子「でも本当、スゴイ迫力でしたよ、奏お姉さま……あたし、思わず泣いちゃったぁ」
奏「ふふっ、薫子ちゃんは涙脆いですからね…。あのですね、瑞穂お姉さま…。
  薫子ちゃんってば、この間、寮でドラマを見ているときだって、
  『感動したよ〜』って大泣きに泣いていたのですよ」
薫子「あっ!もぅ……内緒にしといて下さいよ〜。奏お姉さま……」
瑞穂「いいじゃない、薫子ちゃん…。先ほど紫苑さんに言われたでしょ?
   自分の感情を表すのは悪い事じゃないって……」
薫子「まぁ、そうなんですけどね…。でも私としては、やっぱり納得がいかないと云うか、
   恥ずかしいと云うか……(ゴニョゴニョ)」

口を尖らせて拗ねるような薫子を見て、瑞穂と奏は笑った。
薫子、奏、瑞穂……(奏を挟むような形)……
3人は笑いながら寮に向かって歩いていった。



487 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:09:16 ID:Dmbomvna0
/**************** 聖應女学院 寮前 ***********************/

瑞穂「楽しい時間というのは、早く過ぎるものね……」
薫子「そうですね……何だかココに付くまで、あっという間でしたよね」
奏「うぅ……奏、もっと瑞穂お姉さまとお喋りしたかったのですよ」
瑞穂「ふふっ、ありがとう………さて、二人とも無事、寮に付いた事ですし……
   私もそろそろ帰りますね」
奏「うぅぅ…はいなのですよ」
瑞穂「そんな顔しないの。大丈夫、会おうと思えばいつだって会えますから……ね?」

別れを惜しみ涙ぐむ奏に、瑞穂は優しく頭を撫でた。

瑞穂「さ、今度こそ本当に帰るわね……二人とも、おやすみなさい」
奏「おやすみなさいなのですよ、瑞穂お姉さま」
薫子「おやすみなさい、瑞穂さん」

別れの挨拶をすると、瑞穂は正門に向かって歩いて行った。

薫子「瑞穂お姉さまっ!今日はありがとうございました!!」

薫子は瑞穂の背中に向かって、大きな声で叫んだ…。
正門を曲がるときに、瑞穂は少し振り返り、笑顔で手を振った。
奏と薫子も大きく手を振って、長女の帰りを見送った……。


488 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:15:57 ID:Dmbomvna0
薫子「行っちゃっいましたね…」
奏「はい……でも、瑞穂お姉さまが仰っていたように、会おうと思えば、いつだって会えますから…。
  いつまでも悲しんでいられないのですよ」
薫子「そう…だね」
奏「そういえば薫子ちゃん、いつの間にか瑞穂お姉さまと仲良くなったのですね…」
薫子「え?う…うん、まぁ何と言いますか……奏お姉さまを待っている間に、二人でゆっくり話すことができましたし……。
   その…お二人の過去が知れて、ちょっと気が楽になれましたし…」
奏「そうなのですか……瑞穂お姉さまがいらっしゃった時、薫子ちゃん…少し硬い表情をしていましたから……
  奏、ちょっと心配だったのですよ」
薫子「お姉さま……うん、もう大丈夫だから。心配かけてごめんなさい」
奏「ううん…いいのですよ。さ、もう中に入りましょう」
薫子「はい」





/**************** 聖應女学院 近辺 ***********************/

瑞穂「ん?あれは…」
西岡「お帰りなさいませ」 (宮乃小路家の運転手)
瑞穂「西岡さん……どうしてここに?」
西岡「貴子さまから、お伺いしておりましたので。さ、どうぞ」
瑞穂「もぅ…貴子さんも楓さんも心配性なんだから……」

まぁ、でも宮乃小路家の長男が女装している姿はなるべく晒さない方がイイかな?(今更だけど)
そう思い、しぶしぶ瑞穂は車の中へ入っていった。

瑞穂「頑張ってね…薫子ちゃん」


489 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:21:30 ID:Dmbomvna0
/************** 8月26日 夜 寮内 *******************/

奏「ご馳走様」
薫子「ごちそうさまでした〜」

薫子「あ、食器は私が洗っておきますから…お姉さまは部屋で休んでいて下さい」
奏「え?ですが…」
薫子「いいから…今日は私がやりますから。…ううん、やらせて下さい」
奏「薫子ちゃん……、わかりました。では、お言葉に甘えさせてもらいますね」
薫子「うん……あ、それと」
奏「まだ何かあるのですか?」
薫子「あ…うん、その……今日は奏お姉さまの部屋でお茶したいな〜って……」
奏「私の部屋で…ですか??」
薫子「うん…だめ……ですか?」
奏「別段かまいませんが……」
薫子「やたっ!」

薫子「それじゃ、食器を片づけたらお姉さまの部屋に行きますので…
   お姉さまは何もしないで待っていて下さいね」
奏「な、何もしちゃダメなのですか!?」
薫子「うん、何もしちゃダメ……いい?」
奏「わ…わかりました……」

変な薫子ちゃん……と思いながらも、薫子のあまりにもの熱心さに、奏はしぶしぶ了解し自分の部屋に戻って行った。

薫子「………よしっ」

奏が食堂を出ていくのを確認すると、薫子はガッツポーズをした。
そして、残っていた洗い物を手早く片づけると、いそいそと冷蔵庫の方へ足を運んだ。



490 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:23:43 ID:0SHvoI4/0
支援

491 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:32:01 ID:Dmbomvna0
ガチャッ(冷蔵庫を開ける)

冷蔵庫には、先日買ったばかりのケーキが4つ保存してあった。
(瑞穂『奏ちゃんは苺のショートケーキが大好物よ……そうね、
 駅前の「ガトー・ド・リュイソー」なんかが、値段も良心的だし、いいんじゃないかしら?』)
と聞いていたので、ショートケーキを2つ、それとフィナンシェが1つとラズベリーのケーキが1つを昼のうちに買ってきておいた…

薫子「う〜ん……皿に盛った方が見た目はいいんだけど……それじゃ1個ずつしか載せれないし……うん、このまま(箱に入れたまま)持ってこう。………あとは、ええと…アイスティーの作り方は…たしか……」

瑞穂の助言を聞いてからおよそ1週間の間、薫子は必至で紅茶の淹れる練習をした(奏には内緒で)
本屋で調べたり、電話で由佳里にも相談した。淹れたお茶は寮母さんに試飲して意見を聞いたりなんかもした……。

――とにかく、この1週間、やれるだけのことはやったんだ……あとは、これを奏お姉さまに飲んでもらうだけ――

薫子は気合を入れなおして、アイスティーの準備をした。


薫子「…っと、これで一通り準備は終わったかな?あとは……」

ケーキも用意したし、紅茶もティーポットに入れ、皿も2人分、コップも2人分用意した。



492 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:35:34 ID:Dmbomvna0
薫子「ん〜〜、お盆は…どうしよう……、たしか奏お姉さまはいつも……」

薫子はいつも奏がお茶を持ってきてくれている場面をイメージした。

薫子「いつもはお茶だけだから、小っちゃいお盆で持ってきてくれてたっけ……」

薫子の記憶では、小柄な奏が、両手に小柄なお盆を持って扉を開けている姿しかなかった。
その小柄なお盆が、奏が持つと、とても可愛らしく目に映っていた。

薫子「でも、今回はケーキとお皿があるし……うん、大きいお盆でいっか」

自分が小柄なお盆を持っている姿が想像できず……何より身長も高いのだから、大きいお盆の方が自分には似合うだろう。
………薫子はそう考えて、かなり大きめのお盆にすることに決めた。

薫子「これでよし…っと」

用意した食器類なんかも全てお盆に乗せて、薫子は食堂を後にした……。
しかし……。

薫子「おっとっと…お盆に乗せて運ぶのって、意外と難しいな……わわっ!っとと」

お盆の上ではケーキや食器がフラフラと動き、安定しなかった。
この1週間、紅茶の淹れ方にだけ気を取られてたので、薫子にとっては思わぬ誤算だった。

――お茶を運ぶ練習もしとくんだったかなぁ――

唯一の救いは、今日用意したお茶がアイスティーだった事だ……ホットの紅茶だったら、もっと慌てていたに違いない…。



493 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:37:02 ID:x08FDAmi0
shien

494 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:38:10 ID:Dmbomvna0
――まぁ、でも……ここまで来たんだから、あとは慎重に…慎重に…――

薫子は牛歩のごとく、慎重に階段を上り、奏の部屋の前まで到着した。
しかし、運ぶだけで精一杯のため、ドアをノックすることができなかった。
膝の上にトレーを乗せ、ノックしようかとも考えたが、危ないのでやめた。
仕方なく、薫子は声を上げることにした。

薫子「奏お姉さまー、いらっしゃいますかー?」
奏「はーい、どうぞなのですよ。」

部屋の中から奏の声が聞こえた。

薫子「あのー、ドアを開けてもらってもイイですか?」

部屋の中でパタパタと奏が歩いてくる音がする。
ガチャッ(ドアを開ける音)

奏「……どうしたのですか?薫子ちゃ…って」

ドアを開けるなり、薫子がお盆を持っている姿を見て、奏は驚いた。

薫子「え、えへへへ……お茶とケーキを持ってきたので……中に入れてもらえませんか」
奏「は、はいなのですよ!」

一瞬、何が起きているのか把握できなかった奏では、照れ笑いしている薫子を見て我に戻った

薫子「お邪魔しま〜す。っとと」
奏「あ、机の空いてるスペースに置いといて下さいなのですよ」
薫子「あ、はい」
奏はドアを閉めて、薫子の方に寄って来た。
その間に、薫子は、コップに紅茶を淹れてお茶会の準備をした。


495 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:45:33 ID:Dmbomvna0
奏「あの……薫子ちゃん、いったいどうしたのですか??お茶だったら、私が用意するのに…」
薫子「あの…さ。今日って奏お姉さまの誕生日じゃない?……だからさ、今日は私がお姉さまにお茶を淹れたかったんだ……
   ほら、私っていつもお姉さまにお茶、用意してもらってるじゃない?……だから…せめて今日だけは……って」
奏「薫子ちゃん………」
薫子「本当は、何かカワイイ物でもプレゼントしたかったんだけど……私、あんまりそういうのに詳しくないから……」
奏「ううん……そんなこと……これだけでも私には十分なのですよ」

奏はあまりの嬉しさに、少し涙が出た。

薫子「ささっ……ケーキも買ってきましたから、一緒に食べませんか」
奏「っっ(目じりの涙を拭いて)……はい」

奏は薫子と向かい合うようにして座った。

薫子「それじゃ……お姉さま、お誕生日、おめどう」
奏「ありがとうなのです」
お祝いの言葉を言うと、二人は一緒にお茶を飲んだ。
薫子「…ちょっと……苦かったですね……紅茶」
奏「そうですね……でも、ケーキを食べるには、これぐらいが丁度いいと思うのですよ」

奏の気遣いに、薫子の心は温かくなった。

薫子「あ、ケーキ、お皿にとりますね」
奏「ショートケーキ!」
薫子がケーキの箱を開けると、奏が中身を見て第一声をあげた。

薫子「瑞穂さんに聞いたんです…。奏お姉さま、ショートケーキが好きだって」
奏「瑞穂お姉さまが……」


496 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:48:53 ID:0SHvoI4/0
支援

497 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:48:58 ID:Dmbomvna0
去年は、自分の生い立ちを隠していたのでお祝いも何も無かったのだが、きっと、そのことを気にしていらっしゃったのだろう…。
既に学院を去ってしまったが、それでも瑞穂の心遣いが奏には嬉しかった。

薫子「それにしても、お茶を運ぶのって、意外と難しいんですね……あたし、何度かこぼしちゃうかと思いました。」
奏「クスッ……クスクス」

ぼんやりと言った薫子の言葉に、奏は思わず笑ってしまった。

薫子「あ、奏お姉さま、ひどい……何もそこまで笑わなくっても……」
奏「クスッ…ご、ごめんなさいなのですよ…ふふっふふふ……でも、これは違うのですよ」

奏は少し深呼吸をし、落ち着きを取り戻した。

奏「何も、薫子ちゃんがおかしいから笑ったのじゃないのですよ。……ただ、薫子ちゃんが私と一緒だから笑っちゃったのです」
薫子「奏お姉さまと……一緒?」
奏「はい……」

奏は薫子が持ってきたお盆を、どこか遠い目をしながら語り始めた。

奏「あれは、去年の6月……ちょうど瑞穂お姉さまが転入してこられた日の事です……
  その当時、寮には私と由佳里ちゃん、そして由佳里ちゃんのお姉さまでいらっしゃる「まりや」様の3人しかいませんでした。」

奏「新しく寮に入ってこられる方が、上級生と知った時…初めてお世話できる「姉」ができるんだって……大はしゃぎしてたのですよ」
  それで、お姉さまが部屋に入られる前に、お茶を用意しておこうって張り切っていたのですよ」


498 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 01:59:49 ID:IyDZfqCO0
つC

499 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 02:11:06 ID:ZNFi5PaZ0
何カ所か気になる部分あるけど楽しんでるぜ!
さらに支援

500 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 18:51:41 ID:oLanPrY50
つづけて

501 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 22:10:11 ID:2kKNlvVX0
アクセス規制くらってしまったかな?
取りあえず自分の規制が解けたか確認支援

502 :324:2010/11/01(月) 22:10:51 ID:Dmbomvna0
――私と一緒だ…――

奏「ところがですね……何分、私もお茶を持っていく事なんてしたこともありませんでしたから、お盆はどれにしようか迷ったのです。」
奏「で、その時、大は小を兼ねるのだから、大きいお盆にしようって……そう思ったのです。
  ところが、薫子ちゃんと一緒で……運んでいる途中にお茶や食器がユラユラ揺れて…なかなか前に進むことができなかったのですよ。
  それで、奏が階段を塞いじゃう形になっていたのです…」
奏「そこで、私が体制を崩しかけて、こぼれる〜って…そう思った時、見知らぬお姉さまが後ろから優しく奏を支えてくれたのです。」

奏は、その時のシーンを再現するかのように、身振り手振りを加えて薫子に話した。

奏「それで、お姉さまに支えてもらいながら、奏はようやく階段を登りきったのです…。
  そして、その時に教わったのです…『お盆に余分なスペースがあると、載せている物が滑ってしまうから、お盆の大きさは載せる物の量に合わせた方が良い』って……」

薫子「そうなんだ…そっか、そうだよね……奏お姉さまがいつもお茶を持ってきてくれる時、小さいお盆なのは、ちゃんと理由があったんだね」

奏「そうなのです。これが瑞穂お姉さまから最初に教わったことなのですよ」

薫子は不思議な思いを感じていた。奏「それでですね、その時は結局、瑞穂お姉さまがご自身でお盆を運んだのですよ〜」
薫子「あははっ……そうなんだ」
奏「はい……恥ずかしい話です」
薫子「ううん、全然そんな事ない……。奏お姉さまにもそんな時期があったなんて思えて、あたしスゴク安心した。」


503 :名無しさん@初回限定:2010/11/01(月) 22:18:27 ID:fhI4rNhu0
支援ですわ

504 :324:2010/11/01(月) 22:22:58 ID:Dmbomvna0
薫子「でも、何か不思議……私が今こうやって、奏お姉さまに教わっている事は、
   それは瑞穂さんの教えでもあるんだよね……」
奏「そうですね……教科書などには載っていない、血の繋がらない『姉妹』が受け継いでいく
  ……そんな伝統が、この寮には残っているのですよ」
薫子「…………」

奏の言う『伝統』という言葉が、薫子の頭で反芻した。
今まで、高利貸の娘として周りから冷たい目をされてきた薫子だが、この学院…寮に伝わる歴史と想いが
自分を包んでくれている…そんな気持ちがした。

――ここでなら…あたしも普通に生きていくことができるかも……――

目の前にいる『姉』の温かさ、そしてココには居ない『もう一人の姉』の優しさ……
その2人の思いが薫子にはかけがえの無いものに感じた。
それは奏も同じで…目の前にいる『妹』の真っ直ぐな思いと、不器用ながらも優しい心が、嬉しかった。

奏(それでですね……貴子さまと瑞穂さまは……)
薫子(うそーっ、あの二人が……?)
奏(そうなのです、私のリボンが原因……)
薫子(へぇ〜……)
奏(…………)
薫子(…………)


奏の生まれて初めての誕生日会は、優しく、静かに過ぎて行った。


〜End〜

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