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処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第19話

452 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:59:49 ID:WnHv5YGc0
いい話を出された後に書くのも気が引けるけどっ


   「血筋」


 それは、薫子さんとの結婚式を半年後に控えた、ある日の事。

 『用事がある』とかで実家に帰っていた薫子さんが家に戻ってきた時に、何やら考え込んでいる様な
顔をしていたので、気になって聞いてみたところ。
「………ね、千早。一つ、聞きたい事があるんだけど」
「はい、何でしょう?」
 僕がそう云うと、一瞬薫子さんは云うか云うまいかを迷っていたみたいだったが。
「その、さ。聖應に居た時に、千早が実家にあたしの事を迎えに来てくれたじゃない」
「ええ、ありましたね」
 殴り込み同然の事をして薫子さんとの想いを確認出来たのだから、忘れられない想い出になっている。
「あの時、親父が『御門と云えば高貴な血筋に繋がる一族だ』みたいな事を云っていたの、憶えてる?」
「………ああ」
 そんな事云われたなあと、薫子さんに云われて想い出した。
 あの時は気にも留めて無かったけれどね。
「そう云えば、そんな感じの事を云われた気がしますね」
「今日さ、実家に帰った時にも同じ様な事を云われたんだよね。…あれって、どう云う事? やっぱり
千早の家って、凄い家系なのかな?」
 薫子さんのお義父さんも流石業界の人だけあって、そう云う情報には精通していると云う事なんだろう。
「そうですね…御門も、母の家系の妃宮も、所謂旧家にあたります。高貴か…と云われますと、
僕自身はあまり気にした事はありませんけれどね。今じゃ殆ど意味のない物ですし、そもそも僕の家は
御門の中でも分家に当たりますからね」
 そう云いながら、僕は次の言葉をどう続けようかと考えて居た。
「ですが、恐らく薫子さんのお義父さんが仰っていた『高貴な血筋』と云うのは、恐らく御門の親戚筋の
事を仰っているのだと思います」
「親戚?」
 その言葉に、薫子さんは不思議そうな顔をする。

453 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:01:13 ID:PRH8hk1m0
紫苑

454 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:02:18 ID:WnHv5YGc0
「ええ。…そうですね、その親戚の話は薫子さんにも話しても良いかも知れませんね」
「え、それってもしかして、ものすごく凄い人とか出てくるのかな…?」
 僕のその言葉に、聞いても良かったのだろうかと云う顔をした薫子さんが聞き返してきた。
「凄い人かどうかは解りませんが…そうですね、薫子さんも多分ご存じの方なら、一人いらっしゃいますよ」
「へ? あたしが知ってる人? ………って、誰?」
 そんな人居たっけな、と云う顔をしている。
 まあそうだよね、多分薫子さんの前では正体を偽っていた筈だし。
「聖應に居た頃は『宮小路瑞穂』って名乗っていましたよ。…ふふっ」
 あの人も恐らく、色々苦労したんだろうなぁ。
 何故かそれが少しだけ愉快な気分になって、思わず微笑む。
「瑞穂さん? …え、瑞穂さんが?」
「ええ。…実はあの人は『僕と同じ』なんです」
「千早と同じ………って、まさか!?」
「ええ、その『まさか』です。…あの人は本名を『鏑木瑞穂』と云いまして、僕から見ると『又従兄弟の
お兄さん』に当たります。…つまり、御門の親戚で高貴な一族、と云うのは、瑞穂さんの家に当たる
『鏑木家』、つまりは鏑木財閥の事を指しているのですよ。鏑木の家も旧家で御門よりも位が上ですからね」
「うそ…でしょ………? そんな、瑞穂さんが男の人だなんて………」
 ああ、やっぱり全然気が付いてなかったんだなぁ。
 まあ、あの人も女装させたらそれなりに見えるからね。
「………ちょっと、奏お姉さまに聞いてみる!」
 と、薫子さんは携帯電話を取り出すと、いずこかへと電話を掛け始めた。
「…あ、もしもし、奏お姉さま? 薫子です、お久しぶりです。…ええ、元気ですよ。…ええ。で、
突然で申し訳ないのですが、もしお暇だったら今からちょっとどこかで会ってお話し出来ませんか?
 …あ、はい…ええ、解りました。じゃあ、これから向かいますね」
 どうやらどこかで会う約束を取り付けたらしい。
「さ、千早、行くよ!」
「え? 僕もですか?」
「勿論! …もし間違ってたら、あたしが恥をかく事になるし」
 ああ、なるほど、それもそうか。
「解りました。では支度をしますね」

455 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:02:29 ID:bV7jZbbn0
支援

456 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:03:57 ID:WnHv5YGc0
「薫子ちゃん、お久しぶりですね」
「お久しぶりです、奏お姉さま」
 薫子さんが電話を掛けてから15分後、僕らは近所の喫茶店で『奏お姉さま』と薫子さんが呼んでいる
女性と顔を合わせていた。
 薫子さんの聖應での『お姉さま』にして、僕らの一つ前の代のエルダーシスター、周防院奏さん。
 何て云うか、小柄な事もあるのだけれど『可愛らしい』と云う表現が合いそうな女性だ。
 …年上の人にそれを云うと失礼になってしまうかもだけれど。
「ところで…薫子ちゃん、こちらの方は?」
 奏さんがそう云いながら、僕の方を向いた。
 薫子さんと目を合わせると、頷いてくれた。
 どうやら自己紹介しても良い雰囲気になったらしいので、僕は口を開いた。
「初めまして、御門千早と云います。薫子さんのフィアンセです」
「…ああ、貴方が『妃宮千早』さんですね。ふふっ、薫子ちゃんから色々伺っていますよ」
「ぐっ………か、薫子さん………?」
「あー…ごめん、千早。その、話の流れで、つい…」
 と云う事は、僕が女装をして聖應に通っていてエルダーになっていた事も知っているのか…とほほ。
「それにしても…聖應では私の次の代のエルダーが二人、と聞いていましたけれど、こうして実際に
会ってみると納得ですね。男の方にこう云うのは傷付くかもしれませんけれど、とてもお綺麗ですし」
 うっ…た、確かに傷付くんですが…。
「そうですよね奏お姉さま? 千早ったら、未だに女の人と間違われるそうですよ」
 何故か薫子さんが嬉しそうにそう云う。
 おかしい…そんな話をしに来たはずじゃなかったのに。
「か、薫子さん…お願いですから、追い打ちを掛けないで下さい…」
「ふふっ、すいません千早さん」
 げんなりした様子の僕を見て、奏さんはくすくす笑いながら詫びてきた。
「…でもそうですね、二人を見ていますと、タイプは違いますけれど、瑞穂お姉さまと紫苑お姉さまの
エルダーペアを想い出しますね」
「あ、そうそう。その、瑞穂お姉さまの事なんですが…」
 そこで当初の目的を想い出したらしい薫子さんが話を戻した。
「瑞穂お姉さまがどうかしました?」
「えっと…その、瑞穂お姉さまも男の方だって、千早が…」
「………………ああ」

457 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:05:38 ID:WnHv5YGc0
 少しの間が開いた後、奏さんは頷いた。
「そうでしたね、千早さんはまりやお姉さまのお血筋ですから、本当の瑞穂お姉さまの事をご存じでしたね」
「ええ。…あ、この事は薫子さん以外には誰にも口外はしていませんので、ご安心下さい」
「そうですか、ありがとうございます」
 そう云って奏さんは微笑んだ。
「え…と、云う事は、その話は本当なんですか?」
「ええ、本当ですよ」
「………うーわー、全っ然気が付かなかった…」
 そう云うと薫子さんは、頭を抱え込んでしまった。
「ふふっ。瑞穂お姉さまもお綺麗でしたからね。気が付かなくても仕方ないかも知れませんよ」
 奏さんは薫子さんにそう云って、また柔らかく微笑んだ。

「…その、奏さん」
「はい、何でしょう?」
「ちょっと、お伺いしたい事があるのですが宜しいでしょうか?」
 折角の機会なので、僕はちょっと気になっていた疑問を聞いてみる事にした。
「私で答えられる事なら」
「えっと…瑞穂さんが聖應に通う事になった『理由』みたいなのって、何かご存じでしょうか?」
「千早さんはご存じ無かったのですか?」
「ええ。あちらは鏑木の総帥の御曹司で、私は御門の分家に当たりますので、血筋と云いましても
それ程縁がありませんでしたので」
「そうでしたか。…瑞穂お姉さまが聖應に通う事になった理由は、お爺様の遺言だったそうですよ」
「遺言?」
 また意外な単語が出てきたなぁ。
「…てっきりまりや従姉さん辺りに焚き付けられたとばかり思っていました」
「ふふっ、聖應に来られてからはそれも間違いでは無かったですけれどね。何せ瑞穂お姉さまを
エルダーに推挙、と云い出したのはまりやお姉さまですから」
 そう云って奏さんは少しの間くすくすと笑っていた。
「ああ…それは何となく納得が行きますね」
 まりや従姉さんならやりかねない、と云うか、寧ろ嬉々としてやっていた様子が目に浮かぶ様だ。


458 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:07:39 ID:bV7jZbbn0
支援

459 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:08:08 ID:WnHv5YGc0
「…これは、後で瑞穂お姉さまご本人からお聞きしたのですが、それまでの瑞穂お姉さまは
『何でも人に云われた通りにしかやらない』御方だったそうです」
 それは僕の中にある瑞穂像とほぼ合致する。
「…それを心配されたお爺様が、聖應で人との接し方を学ぶ事を目的として編入させられたのだ、
と仰っていました」
「………なるほど、そうでしたか」
 確かに、あの人のなりを想い出してみると、何となくおどおどした様な雰囲気で、いつもまりや
従姉さんの云いなりになっていた姿しか浮かんでこない。
 それがあったので、聖應であの人の残した話を聞く度に違和感を感じる事になったのだけれど。
「その結果が、あの時の聖應に残されていた数々の『伝説』…ですか」
「ええ、そうですね。…後は、瑞穂お姉さまのお母さまの想い出に触れ合う為、とも聞いています」
「瑞穂さんのお母さんの想い出?」
「ええ。瑞穂お姉さまのお母さまも聖應の卒業生で、しかもエルダーだったそうですよ」
「…それは初耳でした」
 瑞穂さんのお母さんは確か瑞穂さんが幼少の頃に身罷られたと聞かされた憶えがある。
「寮にはその頃の忘れ形見がありましたので…」
 そう云って、奏さんは少し遠い目をしていた。
 多分、寮での出来事を想い出していたのだろう。
「…そうでしたか。………瑞穂さん、聖應で随分変わったんだなぁ………」
 今ならあの人とも普通に接する事が出来そうな、そんな気がしてきた。
「それについては、千早さんも…でしょう?」
 そんな僕の心を見透かしたのか、奏さんがそんな事を云ってくる。
「…そうですね。僕も、あの学院で沢山貰いましたから」
「そうですか、それは良かったです」
 奏さんはそう云って微笑んでくれた。

「…あの、奏お姉さまは…」
「はい?」
「…その、瑞穂お姉さまが男の人だと云う事を知って、それで納得していたのですか?」
 頭を抱え込んでいた薫子さんだったが、顔を上げて奏さんの方をまっすぐ見ると、そんな質問をした。
 奏さんは、少しの間じっと薫子さんの顔を見ていたが。

460 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:13:47 ID:IsKmyAOd0
支援

461 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:17:21 ID:WnHv5YGc0
「…そうですね。私は瑞穂お姉さまから一杯頂きましたし、自分を偽っていた事も赦して頂きましたから。
…それに」
「………それに?」
 聞き返した薫子さんに、奏さんは優しい笑顔を向けながら。
「それに、例え瑞穂お姉さまが男の方でも、私の大事な『お姉さま』には変わりは無いのですよ」
 きっぱりと、そう答えた。
「奏、お姉さま…」
「薫子ちゃんだって、千早さんの事はそうでしょう?」
「………ええ、そうですね」
 ちらりと僕の方を見た薫子さんだったが、そう云ってこくんと頷いていた。

「薫子ちゃん、瑞穂お姉さまの事は、出来れば…」
「ええ、解っています。あたしも千早の事がありますからね」
 喫茶店を出たところで、奏さんと薫子さんがそんな話をしていた。
 二人の仲の良さを見ていると、本当に『姉妹』なんだなぁと思わずには居られない。
「奏お姉さま、今日はわざわざありがとうございました」
「いいえ、どう致しまして。…あ、そうそう、お二人の結婚式には呼んで頂けるのですよね?」
「ええ、勿論ですよ。千早のウェディンg…ごほん、晴れ姿もお披露目しますから楽しみにしていて下さい」
「ちょ、ちょっと薫子さん、何ですかその話は!? 着ませんからね絶対!」
「わあ、それは楽しみですね☆」
「か、奏さんまで焚き付けないで下さいっ!」
「あはははっ」
 焦る僕の声とは裏腹に、楽しそうな二人の笑い声が響き渡る。

「はぁ………全く」
 奏さんを見送った後、家路についた所で僕は思わず溜め息を吐いた。
「あははっ、ゴメンゴメン千早」
「全く…一体何処でそんな話が出ているのですか…いや、聞かなくても何となく想像は付きますが…」
 どうせ香織理さんのいつもの悪巧みだろう。
 全く、あの人はいつになっても変わらないなぁ。
「まあ、香織理さんだしねー」
「…やっぱりね」

462 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:18:24 ID:bV7jZbbn0
支援

463 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:34:46 ID:IuCLzQBp0
 はぁっと、また溜め息が出る。
 これは逃げられない様な気がするから、覚悟は決めて置いた方が良いのだろうか…。
 と、朧気にそんな事を考えていたら。
「…でもさ、瑞穂さんがそんなだったって千早は知っていて、それで聖應では黙っていたんだよね」
 薫子さんがそんな事を聞いてきた。
「ええ、そうですね。そんな事を話したら自分に跳ね返ってきますし」
 まさか鏑木の総帥の嫡子がそんな事をしていたなんて、スキャンダルにしかならない
ようなネタを広める訳にもいかないしね。
「うん。………その、複雑じゃなかった? 親戚が同じ学院に通って居て、しかも自分と
同じエルダーだったとか」
「そうですね…僕が知っている瑞穂さんと違う話ばかり聞かされましたので、正直かなり
驚きましたよ」
 まあ『伝説』と云う位だから、話に尾びれ腹びれとかが着いているかも知れないけれど、
それにしても改めてあの人の凄さを思い知らされた気もする。
「複雑、と云えばですね」
「ん? 何?」
「実は、僕は瑞穂さんの事が嫌いだったんですよ」
「え? …それは、どうして?」
 びっくりした様な顔をして、薫子さんが聞き返してきた。
「薫子さんもご存じの通り、瑞穂さんって何でも出来る人じゃないですか」
「うん。フェンシングをあたしに教えてくれたのも瑞穂さんだったし、本当に何でも出来る
凄い人なんだなぁって思ってた」
「ええ。で、あれだけ出来の良い年長者が親戚にいるとですね、こっちがどれだけ努力を
しても『瑞穂君はもっと出来る』という話になってしまうんですよ」
「…なるほど…」
「しかも、僕が知っている瑞穂さんは、何となく気が弱そうな印象の人でしたので。
…そんな比較をされたら、子供の頃ですから、嫌いにもなると云う物です」
「そっかぁ………ん? でも千早、今『嫌いだった』って過去形で云っていたよね?」
 流石は薫子さん、良い所に気が付きますね。
「ええ。聖應で瑞穂さんの話を聞いていたら、そんな事はどうでも良くなりました。
…あの人も色々苦労したんだろうなぁって、ね。ふふっ」
 困った様な顔をしながら、それでもエルダーとして凛として居る姿が何となく頭に思い浮かぶ様だ。

464 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 01:35:58 ID:IuCLzQBp0
「…そっか」
 それを聞いて、薫子さんは何故か嬉しそうに頷いていた。
「そうだ薫子さん、今度瑞穂さんに会いに行ってみます?」
「へ? きゅ、急に何で?」
「まあ親戚として、結婚の挨拶とかもした方が…と云うのが建前ですよ。僕も久しぶりに
会ってみたいですし」

 …多分。
 今なら会って話をすれば、僕の過去の勝手な思い込みとも決別出来る気がする。
 そんな事を考えながら、薫子さんと二人、家路を歩いて行った――。


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