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処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第19話

437 :名無しさん@初回限定:2010/10/29(金) 23:32:57 ID:+EdO55Kr0
/*********** 会場間 コンクール終了後 *********************************/

薫子「えぐっ……よがっだょ……綾香さん(奏の役)……ちゃんど………報われて」
初音「はいはい…もぅ、薫子ちゃん………ほら、涙を拭いて」
薫子「あ゛りがど………初音ぇぇ……ぐじゅ……ぐすっ」

コンクールが終わるなり、薫子は会場内のロビーで大泣きに泣いてしまっていた。
(正確には、他校のコンクールを見ている時点で、既に涙ぐんでいた)
ロビーの椅子に薫子と初音が座り、初音が薫子をあやすようにハンカチを差し出した。
その様子を瑞穂達4人は、やや離れた所から見つめていた……。

圭は、聖應の出番が終わるなり、裏へ周り(顔を利かせて関係者として入っていった)演劇部の人たちと事前に話をしていた。
そのため、コンクールが終わると足早に帰って行った。
もちろん、美智子も一緒に……

瑞穂「か、薫子ちゃんって……随分と涙もろいのね」
由佳里「そうなんですよ〜。以前にも、4人で映画を見ているときにボロ泣きしたんですよ?」
紫苑「ふふふっ……可愛らしくてよろしいじゃありませんか。それに、作品に感涙してしまうことは、決して恥ずかしい事ではありません……。」
貴子「そうですね…。どの学院の演劇も素晴らしいものでしたし…、私には薫子さんが泣き出してしまう気持ち……よく分かりますわ。」
由佳里「まぁ、そうなんですけどね……」
由佳里「ところで、お姉さま方はこれからどうされるのですか?」

公演会そのものは終わったので、一般の人たちは散り散りに帰りはじめている……。

紫苑「私たちがココにいても邪魔なだけですわね……。正直、奏ちゃんの誕生日をちゃんと祝ってあげたい…というのが本音なのですが。当の奏ちゃんが乗り気でないのに、無理矢理する……というのも本末転倒ですしね……瑞穂さんはどうされますか?」
瑞穂「それなんですけどね…紫苑さん……実は………」


438 :名無しさん@初回限定:2010/10/29(金) 23:38:24 ID:+EdO55Kr0




紫苑「なるほど……、それはとても素晴らしいことだと思いますわ。それでは、私たちは先に帰っていますわね」
貴子「そうですね。それがよろしいかと思います……。私も楓さんに(宮乃小路家の召使い)、瑞穂さんの帰りが遅くなる……と、お伝えしておきますわ」
瑞穂「有難うございます。紫苑さん、貴子さん」
由佳里「でも……本当に、よろしいのですか?……瑞穂お姉さま」
瑞穂「ええ、もちろんよ……。さて、………あちらの方も、少し落ち着いてきたようですし、行きましょうか…。」



初音「落ち着いた…?薫子ちゃん」
薫子「ぐすっ…、うん、ありがとう…初音」
由佳里「落ち着いたようね」

頃合いを見計らって、由佳里たちは薫子の傍にやってきた。

薫子「はい……、その……ごめんなさい。見っともない所をお見せしちゃって…」
紫苑「いいえ、それは間違った考えですわ。薫子さん……」

薫子が自分のことを卑屈気味に言うと、紫苑が厳しい口調で遮った。


439 :名無しさん@初回限定:2010/10/29(金) 23:56:39 ID:+EdO55Kr0
紫苑「自分が感じた事を黙殺する…時と場合によっては美徳な行為とされますが、
   本来それは政治などの高等な場面で、怒り・憤りといったことを隠す時にこそ美徳とされるものです。
   小説であれ、映画であれ絵画であれ、芸術に対して自分の感情を表すのは決して恥ずかしい行為ではありません…。」
薫子「紫苑……様」
由佳里「紫苑様の言う通りよ、薫子……。いつも正々堂々、真っ直ぐに…それがあなたでしょ?だったらウジウジしないの」
薫子「皆さん……はいっ」

紫苑にきつく言われて、やや落ち込んだ薫子だが、由佳里がフォローしてくれたおかげて、少し気分が楽になった。

由佳里「さて…と。それじゃ、コンクールも終わったことだし………帰りますか」
初音「え…? 奏お姉さまがお戻りになるのを待ってるんじゃないんですか??」
由佳里「ん〜〜…。そうしたいのは山々なんだけどね……。かといって、帰りが遅くなって、もし初音に何かあれば…、それこそ大変でしょ??」
初音「まぁ……それはそうなんですけれども………」

正直な所、初音にとって夜中に町を徘徊する事は、かなり怖かった……でも、敬愛するお姉さまを置いて、先に帰ってしまう事に少し抵抗を感じていた。

由佳里「そのための騎士殿じゃない??……頼んだわよ、薫子」
薫子「はい、任せて下さい」
初音「で、でもぉ……」

自信満々に言う薫子だが、初音にはやはり不安があった……。
いくら薫子が運動抜群で気も強いからといっても、やはり年頃の女の子だ……。怖い男の人たちに絡まれでもしたら、一溜りもないのではないか?………その思いが頭から離れなかった。



440 :名無しさん@初回限定:2010/10/29(金) 23:57:23 ID:Fac4Nshk0
支援

441 :名無しさん@初回限定:2010/10/29(金) 23:59:47 ID:+EdO55Kr0
薫子「初音は心配性だなぁ…。アタシの事だったら大丈夫。だから初音は先に帰ってて…いい?」
初音「う、う…ん……」
瑞穂「大丈夫よ…初音ちゃん。私も一緒に残りますから……だから安心して」

未だに独り先に帰る事に抵抗を感じている初音に、瑞穂は優しく声を掛けた。

薫子「え゛っ!?……瑞穂さんも残るんですかっ?」
瑞穂「ええ……いけないかしら?」
薫子「い…いえ……全然………」

一人で奏を送って帰ろう(一緒に帰ろう)としていた薫子の思惑が崩れ去った。
かといって、自分よりも強い(少なくともフェンシングや合気道では)瑞穂が残ってくれると言ってのだから、無下に断ることができなかった。

由佳里「そういうわけだから、OK?初音??」
初音「……わかりました。」

初音は瑞穂が一緒に居ると分かると、少し気が楽になった…
(中等部の頃、生徒会長が誘拐されそうになった所を、瑞穂が助けた……という噂を聞いてた事があるから)


紫苑「さ、名残惜しいですが、あまり長居していても仕方ありません…。私たちは先に帰らせてもらいましょう」

一通り、話が付いたところを見計らって、紫苑が別れの挨拶を切り出した。
その一言がきっかけとなり、皆 めいめいに帰りはじめた。


442 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:00:39 ID:+EdO55Kr0
紫苑「それでは皆さん……御機嫌よう。」
貴子「瑞穂さん!あまり無茶はしないで下さいね」
瑞穂「わかってます……紫苑さん、御機嫌よう」

貴子と紫苑が帰ると、会場には瑞穂と薫子……そして一般の来場者が数人…だけになった(玄関の外では警備員が立っているが)

瑞穂「さて……演劇部のみんなが戻ってくるまで、まだ随分と時間もありますし………何か飲み物でも買ってきましょうか…………薫子ちゃんは何がいい??」
薫子「い、いえ…そんな…私は別に……」
瑞穂「いいの。ここは私におごらせて頂戴…」
薫子「………そ、それじゃぁ……ミルクティーで………」
瑞穂「ミルクティーね。わかったわ…」

瑞穂は会場の少し奥に設置されている自動販売機へ向かっていった。
その背中をぼんやりと見ながら、薫子は近くのイスに腰を下ろした。




瑞穂「はい、薫子ちゃん。」
薫子「あ、ありがとうございます」

瑞穂が缶ジュースを買って戻ってくると、一般の人はほとんどいなくなった。
(ロビーには瑞穂と薫子だけになった)


443 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:01:55 ID:+EdO55Kr0
プシュッ(缶を開ける音)

瑞穂からもらったミルクティーを一口飲むと、自然と『はぁぁっ』っと心の中で溜息をついた。
その横で、瑞穂もイスに座り、一緒に買ってきたブラックコーヒーを一口飲んだ。

瑞穂「……??……どうかした?薫子ちゃん??」
薫子「あ、いえ……何でもありません!」

まさか、ブラックコーヒーを飲む瑞穂を見て、大人だぁ…とか、見た目とのギャップが……とか思った等とは口に出せるはずがない。薫子は慌てて目を逸らしてしまった。
それでも、やはり瑞穂の事が気になってしまい…時折、ちらっと横目で瑞穂を見ていた……。

正直なところ、薫子にとって瑞穂は苦手だった……。
自分よりも運動ができ(運動には自信があったのに)、頭もよく、その上美人で女らしい…
何よりも、瑞穂と一緒に居ると奏がとても嬉しそうに笑う……そんな嫉妬にも似た感情が、薫子の心にあった。


しばらく、二人の間に沈黙が続いた……。

薫子「あ……あの………瑞穂さん………」
瑞穂「なぁに?薫子ちゃん…」

沈黙に耐えきれなくなった薫子が、重い口を開けた。

薫子「瑞穂さんは…どうして残ろうと思ったんですか……?」

奏お姉さまが心配だからですか?
私だけじゃ頼りないからですか??
それとも、奏お姉さまに好かれているって所を私に見せつけたいからですか???
心の中で思っていた黒い感情を吐き出すまいと、薫子は必死で耐えた……。



444 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:04:50 ID:+EdO55Kr0
瑞穂「…………」
薫子「…………」
瑞穂「そうね……二人だけじゃ心配だったから。……というのも確かね……でも………」
薫子「でも…?」
瑞穂「薫子ちゃんとお話がしたったから……かしら」
薫子「あ、あたしに…ですか??」

予想していた答えとは違う返答に、薫子は思わず面食らった。

瑞穂「……いいえ、少し違うわね………正確には……」

瑞穂は優しい顔で、薫子を見た。

瑞穂「薫子ちゃん。あなたの方が、私に何か話したいことがあるんじゃないかしら?」
薫子「っっ!!??」
薫子「どう…して……??」

どうして、そう思ったんですか……
そう言おうとしたが、口が思ったように動かなかった。


瑞穂「演劇部のコンクールが始まる前に圭さんが言ってたでしょ?
   『若きウェルテルのよう』って………そう言われた時の薫子ちゃんの顔が真剣だったし、それに随分と落ち込んでたみたいだったから……」
薫子「………」
瑞穂「違っていたのなら御免なさい……ただ、少し気になったものですから」
薫子「………………」

優しい口調で言ってくれる瑞穂の言葉を、薫子は心の中で受け止めた。
しかし、意地を張っている場合では無い……残っている時間も少ない……もはや、瑞穂しか頼めそうな人がいない…。
薫子は意を決して、自分の悩みを聞いてもらう事にした。


445 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:10:54 ID:IsKmyAOd0
薫子「あの…瑞穂さん………瑞穂さんは…知っています……よね。その………奏お姉さまの……誕生日……」
瑞穂「ええ…8月の26日。もうじきね…。それで?」

薫子は弱々しく話し始めた。

薫子「あの…私……何か奏お姉さまにプレゼントというか……お祝いをしたくて……」
薫子「でも、私、見ての通り無精者だから……その…友達にプレゼントとかしたことが無いから……
   何をプレゼントしてあげたら、奏お姉さまが喜んでくれるのか……わからなくって」
薫子「奏お姉さまは、別に祝ってもらわなくてもいい…って言ってくれてるんですけど………」
薫子「瑞穂さんは知らないかもしれませんが……私、学院では『逆転姉妹』って呼ばれてるんです」
薫子「私…、『妹』なのに……本当は奏お姉さまの面倒を見てあげないといけないのに……それなのに、いつもお姉さまに…お茶とか全部、用意してもらってて……」

ぎゅっ(自分のスカートの裾を強く握る薫子)

薫子「それじゃいけないってことは分かってるんですけど!でも、奏お姉さまが優しくしてくれるものだから……その……つい、甘えてしまって………」
薫子「ですから!奏お姉さまの誕生日だけは…どうしても祝ってあげたいんです!!」

喋っていく内に、感情を抑えられなくなり……薫子は興奮気味に…しかし泣きそうな声を上げた。

薫子「でも、私……学院に友達も少ないから……こういう事……相談できる人がいなくて………」
瑞穂「…………」
薫子「…………」

言い終えた薫子は、裾を強く握ったまま…まるで怒られるのを待っている子供の様に…目をきつく閉じ俯いた……。


446 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:14:59 ID:bV7jZbbn0
支援

447 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:16:50 ID:IsKmyAOd0
瑞穂「ありがとう……薫子ちゃん」
薫子「えっ?」

思いもしなかった瑞穂の言葉に、薫子は思わず顔を上げた…。

瑞穂「薫子ちゃん、さっき言ったわよね?『どうして残ろうと思ったのか?』って……」
瑞穂「実はね……もう一つだけ残る理由があったの………それはね……」
薫子「それは…?」

期待と不安が入り混じっている薫子の顔を見て、瑞穂は柔らかい口調で答えた…。

瑞穂「それはね、薫子ちゃん。あなたにお礼が言いたかったの」
薫子「わ、私に…ですか?」
瑞穂「ええ……。」

瑞穂は薫子から視線を外し、今度はロビーの天井を見ながら……どこか遠くを見る目をして、話を続けた…。

瑞穂「薫子ちゃんなら、もう知っているのよね……夏休みに、奏ちゃんが家に帰らない理由を……」
薫子「…………はい。」

聖應に入学して間もない頃、学院に慣れない薫子は、奏の生い立ちを話してもらった。
あの日、人の強さというのは、見た目だけでは分からない…と云う事を教えてもらった……。薫子はそう思っている。


448 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:18:28 ID:IsKmyAOd0
瑞穂「そう……。あの子はね、とても優しくて、努力家で…芯の強い子だわ……でもね、だからと云って、独りでいることが平気…というわけじゃないわ……」

瑞穂「実はね、薫子ちゃん…。去年の今頃……私は奏ちゃんにご両親がいない事を知らなかったの……。夏休みの間、奏ちゃんを寮に一人だけにして、とても寂しい思いをさせてしまったわ」
瑞穂「それ以外にも、私は何度も辛い思いをさせてしまった……奏ちゃんを泣かせてしまったのも一度や二度じゃないわ……」
瑞穂「そんな奏ちゃんが自分の生い立ちの事を話してくれた時、私は『姉』として、その事に気づけなかった自分が情けなかった……悔しかった………そして、嬉しかった………」
薫子「瑞穂さん……」

いつもの優しく、温かい口調の瑞穂が弱々しく語る姿に…薫子はどこか胸を締め付けられる思いがした。
――瑞穂さんは何でもできるから、きっと悩みなんか無いんだろうなぁ――
少しでも、そう思っていた自分が恥ずかしかった。

瑞穂「それでね、その時に私と紫苑さんは約束したの……『私たちが、あなたの本当の家族になります』って……」
薫子「本当の…家族……」
瑞穂「至らない姉だけど、そんな私を奏ちゃんは赦してくれたわ………」
瑞穂「でも…私はすぐに卒業してしまったから、今年の夏……また、奏ちゃんを一人にさせてしまうんじゃないかと、心配していたの」
瑞穂「もちろん、由佳里ちゃんも優しい子ですから…たまには寮に遊びに来てくれるけれども、それでも夏休みの大半を一人で過ごすのは、寂しい事だわ……」

瑞穂は手に握っている缶コーヒーを見つめながら話を続けた。


449 :名無しさん@初回限定:2010/10/30(土) 00:20:16 ID:IsKmyAOd0
瑞穂「でもね、今朝、あなたと楽しそうにしている姿を見てわかったの……そんな心配はいらないんだって……」
薫子「で、でも私…いつもお姉さまに迷惑をかけてばかりで……この前のフェンシングの時だって……」
瑞穂「いいえ…。前にも言ったでしょ?あなたは良い子よ…って。あなたが居てくれているから、奏ちゃんは笑顔でいられるんだわ…」

そう云うと、瑞穂は再び、優しい笑みをしながら薫子の方に顔を向けた。

瑞穂「だからね……薫子ちゃん。…ありがとう………」
薫子「瑞穂…お姉さま……」

瑞穂の笑顔を見る薫子の心には、嫉妬心や劣等感といった感情が消えていた。



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