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処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第16話

158 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 13:48:38 ID:Nr28ukPC0
 ご注意
  L鍋の各SSは、一応、それぞれがパラレルワールドとなっております。
  どっかで見たな〜と思われる設定も、繋がっておりませんので気のせいということでお願いします。
 
『鬼ですよ、このボードゲーム』

 設定はノーマルエンド(一子エンド) 

 卒業から一年後の瑞穂の誕生日パーティー。
 いつものメンバーが、鏑木邸の瑞穂の部屋に集まってお祝いしている。
 ちなみにいつものメンバーとは、瑞穂本人、誕生日に合わせて帰国してきたまりや、恵泉女子大の紫苑、
瑞穂と同じ大学の貴子、そして恵泉女学院の寮から憑いてきた人外の女の子、一子。
 一子のことは紫苑も貴子も、卒業旅行の時以来、顔見知りである。
「凄い凄い、お姉さま、凄いです!皆さん物凄い勢いでビールを飲んでます!もうギュンギュンですっ!」
 一子は未だに、瑞穂のことを『お姉さま』と呼ぶ。
 最初は注意していた瑞穂も、だんだんともうどっちでも良いかと思うようになり、何も云わなくなった。
「まりやが大量に持ち込んだ酒類が、まだまだあるね…」
「あったり前でしょ。パーティー=酒盛り!常識ってもんよ」
部屋に漂う物凄いお酒の匂い。
 もう全員が相当な量を飲んでいる。
 床に転がる大量の缶ビールの空き缶。そして部屋の隅には、缶ビールの入った大箱がまだ、2箱積まれている。
 紫苑の運転する車でまりやがここにやって来る前に、酒屋で仕入れてきたものだった。

159 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 13:49:01 ID:Nr28ukPC0
まりやが開いてくれた瑞穂の誕生パーティーのハズなのだが……
「僕の誕生パーティーだってこと、忘れてるよね」
「嫌ですわ、瑞穂さん。覚えているに決まってるじゃありませんか」
「そうそう」
「今日は瑞穂さんの誕生パーティにきたんですよ」
 そう云われて瑞穂は部屋をぐるりと見回す。
 しかし、部屋にあるのは出前の寿司と空になった一升瓶、あと、酒のつまみに買ってきた『珍味蛸べえ』と
『いか太郎くん』が入ったでっかいプラスチック容器である。
「……違う。絶対に違う。こんなの誕生パーティーじゃない…」
「なにウジウジ云ってんのよ。こんなキレイどころが集まってんだから、もっとハイテンションになりなさいよ」
 酒臭い息を撒き散らしながら、まりやが瑞穂に抱きつく。
「ああっ、まりやさん!瑞穂さんから離れなさいっ!」
 貴子が喚く。
「では、私も。うふふふ」
 紫苑が抱きつく。
「…ううっ、なに、このサバト」
「お姉さま、へっぽこ幽霊三等兵なんのお役にも立てず申し訳ありません」
「大体、まりやさん。貴女は今日、何の誕生日プレゼントも用意してきていないではありませんか!」
「ん?プレゼント?あるわよ〜。つーことで瑞穂ちゃん。明日はあたしとデートだあ」
「「「「えっ?」」」」
 まりや以外全員つっこむ。

160 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 13:59:13 ID:Nr28ukPC0
「ちょっと、まりや。プレゼントをねだるつもりはないけど、一体それのドコがプレゼントなの?」
「うひひひ、勿論ただのデートじゃないわよ。濃厚なデートよ。濃厚!夜のデートも含めてね!」
 そう云われて顔を赤くする瑞穂。
「まりやさん。そういうデートでしたら瑞穂さんへのプレゼントではなく、瑞穂さんからのプレゼントなのでは?」
「いいえ、紫苑さま。瑞穂ちゃんはこう見えても男なんですから。こういうのはやっぱり嬉しいんですよ。ね〜瑞穂ちゃん」
「いや、僕は別に…」
「なあに!聞こえないわよっ!」
 まりやが酒臭い息を吐きながら般若のような目つきで睨む。
「ひっ。何でもないです」
「でしたら私もそのプレゼントにすることにします」
 紫苑が云いだすと、貴子も続いて云う。
「わ、わ、私もですわ。の、濃厚デート。それにまりやさんがデートのお相手ではプレゼントではなく罰ゲームですわ」
「何が罰ゲームですって!ともかく、このプレゼントデートはあたしの発案なんだからあたしのモノ!」
 ビール片手にわいわいと云い合いが始まる。
 それを横目に、はあ〜っとため息をつく瑞穂。
「お姉さま。お疲れですか?」
「ん、大丈夫。一子ちゃん。皆、祝ってくれてるんだから文句いうつもりはないんだけどね」
「それにしても皆さん、パワフルですねぇ。まりやさんは先ほどから缶ビール500ml缶を一息で飲み干してますし、
紫苑さんは珍味の容器を小脇にずっと抱え込んでますし、貴子さんは洋酒のビンをさっきから離しませんし」

161 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:00:15 ID:Nr28ukPC0
「あのお酒、父さまの戸棚からまりやが勝手に持ってきちゃったやつだよね」
 そうこうしている内に話がついたのか、まりやがカバンをごそごそといじったかと思うと、大きな箱をでんと取り出した。
「じゃあ、これで勝負をつけましょ」
「なに、コレ?」
「ゲームよ。ボードゲーム。こんなことになるかもと思って持ってきてたの」
「こんなことに…って予想してたの?」
「当然でしょ。瑞穂ちゃんの誕生日→集まるメンツ→酒盛り→ゲーム対決、ほら決まってるじゃない」
「決まってないでしょ!」
「ということでゲームの勝者は瑞穂ちゃんと濃厚なデートをする権利を得ます!」
 パチパチと沸き起こる三人の拍手。ちなみに瑞穂と一子は拍手していない。
「多数決で決定ね」
「決まっちゃいましたね、お姉さま」
「…ううっ、僕が勝ったらどうなるの?」
「この三人の内、サイコロ振って決めた相手と濃厚デートってどう?」
「それって何も変わらないじゃない」
「つべこべ云わない。じゃ、どうするかは勝った時に決めたらいいじゃない。まあ、勝ったらの話だけど」
「…それで、このゲームは?」
「ボーゲーマニアのあたしが選び抜いた一品よ」
 タイトルを読む瑞穂。
「えっと、『入生ゲーム・鬼』・・・なんてコメントしたら良いのか分からないけど、とりあえず云うね。
名前、丸パクは拙くない?」
「なに云ってんの。パクってないわよ。あっちは『人』、こっちは『入』、別モノでしょ。読み方はニュウセイゲームよ」
「・・・うん、判った。もうそれで良いよ。鬼ってなに?とも聞かないよ」

162 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:00:52 ID:Nr28ukPC0
「それにしても、まりやさん。この展開は何だか覚えがあるような…デジャヴ?」

※重ねて云いますが、以前書いた話と設定は繋がっておりません。

「気のせいでしょ。じゃ、始めるわよ」
「あのう、まりやさん」
 一子が手を上げる。
「なあに?一子ちゃん」
「私も参加したいなあ…なんて思ったりして」
「う〜ん、そうね。じゃ、一子ちゃんも参加ってことで」
「うわあ、有難うございますぅ」
「僕が一子ちゃんのルーレットを廻すね」
 早速、まりやがゲーム盤を広げて準備をする。
 大きなゲーム盤にループ状にマス目が描かれていて、そして盤の真ん中には白・グレー・黒のカードの山が置かれている。
「それじゃ、ルール説明するわよ。この入生ゲーム・鬼はゴールのマスは無し。ループ型の盤上で互いの所持金を奪い合うゲームよ。
各プレイヤーが持ち金100万ペリカでスタートして、持ち金が0になったら脱落。最後の一人になった人が勝者。OK?」
 瑞穂が手を上げる。
「はい、まりや」
「なあに?瑞穂ちゃん」
「突っ込まないって決めたけど、云わずにはいられないから云うね。ペリカってナニ?」
「お金の単位よ」
「・・・なんだか分からないけど、とても不吉な感じがするからドルにして。お願い」
「いちいち五月蠅いわね。いいわよ。ドルにしてあげる。じゃ、順番決めるわよ」
 5人それぞれダイスを振って順番を決める。
 瑞穂、一子、貴子、まりや、紫苑の順番に決定。


163 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:04:11 ID:Nr28ukPC0
「では僕から」
 瑞穂が軽くルーレットを回す。

――カラララッ…3

【ラッキー!白のカードを引け】

「これだね」
 真ん中のシマに置かれている白のカードの山から、一枚カードを引く。
 
《新興宗教を始める。全員からお布施10万ドル貰う》

「ふふふ、凄い数の信者が集まりそうですね」
「その時にはあたしがマネージメントしてあげるわ」
「…絶対にありえないから、そんなこと」
 次は一子の番。瑞穂が変わりにルーレットを回す。
「勢い良くまわしちゃってください」

――カラララララララッッ………8

「うわあ、初っ端からおっきな数字が出ましたね〜。幸先が良さそうですよ、コレは」

【アンラッキー!!黒カードを引け!】

「黒…こっちだね」

164 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:08:35 ID:Nr28ukPC0
 黒カードの山から一枚カードを引く。

《バナナの皮で滑って転ぶ。持ち金1万ドルを残して全て落とす。落としたお金は次の順番のプレーヤーのモノになる》

「ひええええっっっ!!!!」
 絶叫する一子。
「う、うわぁ…これは…初っ端から…」
「ふっふっふ。このゲームを甘く見てもらっちゃ困るわね。伊達に鬼の名をつけている訳じゃないの。一撃必殺があるんだから」
「ボードゲームで一撃必殺って…」
 一子のお金を貰って、ニコニコ顔の貴子。
 ルーレットをまだ一回も回さないうちに、既にダントツのトップ。
「まあまあ、所詮はゲームなんですから。一子さんも気になさらないで」
 余裕めいたことを口にしているが、心の中では瑞穂との濃厚デートをゲットした確信からガッツポーズをしている。
「お遊びですよ。お遊び」
 ブランデーを片手に、貴子が軽くルーレットを回す。

――カラララッ……8

【アンラッキー!!黒カードを引け!】

「・・・えっ!?」


165 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:09:09 ID:Nr28ukPC0
《バナナの皮で滑って転ぶ。持ち金1万ドルを残して全て落とす。落としたお金は次の順番のプレーヤーのモノになる》

「ひいいいいいぃぃぃぃ!!!!」
 絶叫する貴子。
「はいはい、ご苦労さん。これであんた達のお金はあたしのモノっと」
 お金はまりやのところに流れ込んだ。
「こ、これは、サギですわ。ズルですわ、まりやさんの陰謀ですわ!」
 喚く貴子。
「貴子あんた、数秒前までの余裕が一気に吹き飛んで本性剥き出しになってるわよ」
 まりやが缶ビール片手にルーレットを軽く回す。

――カラララッ……4

【ぱるぷんて。グレーのカードを引け】

「グレー?」
「グレーカードはラッキーとアンラッキーが50%ずつ入ってるの」
 瑞穂にまりやが説明する。

【組長暗殺失敗。スクワット10回】

「あらあ、スクワットかあ」
「組長暗殺…一体ナニをやったの?」
「まりやさんの持ってきたゲームだけあって全く変なゲームですこと」
 まりやがスクワットを10回する。
「では次は私ですね」
 いか太郎くんを片手に紫苑がルーレットを回す。
「し、紫苑さん?あまりお行儀が良くないですよ?」

166 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:13:36 ID:Nr28ukPC0

――カラララッ……5

【ハンドル操作失敗!黒カードを一枚引け!】

「黒カード……コレですわね」
 ゲーム盤中央に山積みされている黒いカードの束から、紫苑が一枚とる。

《強制奉仕活動!今からゲーム終了まで誰かに膝枕をしてあげること》

「あら、これはどういう事しょう?」
「つまり紫苑さまは誰かに膝枕をして差し上げないといけないということですね」
 まりやが解説する。
「それは私が誰にするか決めていいのですか?」
「ええ」
 紫苑はクルリと瑞穂の方を向くとニッコリと微笑んだ。
「では、瑞穂さん。どうぞいらしてください」
「えっ!?いや、その、紫苑さん…」
「どうぞ」
「そ、その、罰ゲームなんですからそんな嬉しげに…。何でしたら無理にしなくても良いんじゃないかと…」
 紫苑はポンポンと自分の腿を叩いた。
「瑞穂さん、カモン」
「・・・・・・」


167 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:14:15 ID:Nr28ukPC0
「いいなあ」
 嬉しそうに瑞穂を膝枕している紫苑を、羨ましそうに見ているまりやと貴子。
 瑞穂は顔を真っ赤にして、出来るだけ膝のほうに頭をちょこんと乗せようとしているが、紫苑が強引に頭を引っ張って、
自分の太腿の上に押さえつけている。
「あれでは罰ではなく御褒美ですわね」
「流石は紫苑さま。強運ね」
 ニコニコ顔の紫苑。
「このままじゃ、まともにゲームできないよ…」
 瑞穂の番。起き上がろうとしても、紫苑が瑞穂の頭を押さえつけているため寝転んだままでルーレットを回す。

――カララララッ……7

【ドリフト成功!豆腐屋に勝利!ラッキーカード白を一枚引け!】

「豆腐屋?何のことだろう…ラッキーカードってこれだよね」
 瑞穂はゲーム盤中央に山積みされている白いカードの束から一枚引いた。

《現在の束縛状態から免れる。若しくは任意の人から10万ドル貰う》

「助かったぁ」
 ほっとした表情で膝枕から起き上がる瑞穂。
「瑞穂ちゃんも運が強いわね」
「んんっ、残念ですわ」
 残念そうな紫苑。
「別に10万ドルでも良かったですのに」
「いえ、遠慮しときます」

168 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:19:47 ID:Nr28ukPC0
「次は私の番ですよ。今度こそ〜」
 一子の変わりに瑞穂が回す。
「今度は軽くお願いします」

――カララッ……8

「おや?また気前の良い数字が出ましたね〜」

【とことんツイてないアナタ!黒カードですよ!】

「・・・えっ!?」

《小石に躓いてお金を投げ出す!10ドル残して持ち金を前の順番のプレイヤーに渡す》

「どっひええぇっっ!!!」
 絶叫する一子。
「うわっ、また…。ゴメン、一子ちゃん」
 謝る瑞穂。
「あう…私って一体…。幽霊でありながら滑ったり躓いたり…」
 一子のお金9990ドルが瑞穂のモノになった。残金10ドル。

169 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:20:18 ID:Nr28ukPC0
「では回します。…8は出ないで」
 貴子の番。

――カララララッ……7

【運が向いてきたアナタ!白カードですね】

「ふう、危なかったですわ」
「…ちっ!」
 舌打ちするまりや。

《ひったくり成功!前の順番のプレイヤーから1万ドル奪う!》

「あらあ、貴子。引ったくりなんかして…。人間堕ちたくはないものね〜」
「わ、私が引ったくりなんかする訳ないでしょう!例え貧していても犯罪なんかいたしません!」
「まあまあ、ゲームの中の話ですから」
 瑞穂が宥める。
「えっと、一子さんから1万ドル貰えるんでしたわね。私も所持金が少ないですから助かりますわ……」
「・・・・・・」
 一子は10ドルしか持っていなかった。
 一子、ゲームオーバー!

170 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:30:25 ID:Nr28ukPC0
「あああっ!!!終わりですか!?私、終わりですか!?もう私要らない子ですか!?まるでスチールセイント・・・」
「ストップ!一子ちゃん!」
 がっくりうな垂れる一子。
 貴子もがっくりしている。
「じ、10ドルだけ…」
「にはは〜。貴子潰すチャンスね」
 喜んでいるまりや。
「あの…御免なさい、貴子さん。10ドルしか持っていませんで…うううっ」
「いいのですよ、一子さん。所詮はゲームなんですから。ほほほ」
 貴子が引きつった笑いで答える。
「ああ〜。用無しのポンコツ三等兵は後ろで黙って見物しています」
 一子は貴子の後ろに行くと黙ってゲームを眺める。
 じぃぃぃ〜〜
「・・・・・・・・・」
 じぃぃぃ〜〜
「…あの、一子さん?」
 貴子が後ろを振り返ると、そこには恨みがましい目をした一子の顔が!
「ヒッ、ひえぇぇー!!!」
 絶叫しながら凄い勢いで貴子が後ずさりする。
「どうかぁしましたかあぁ〜」
 ゆらゆらと近寄ってくる一子に貴子が腰を抜かす。
「ヒエッ!ヒエェー!!お、おば、おば・・・」
 そんな様子をまりやは缶ビール飲みながらケラケラ笑っている。
「今更なに云ってんだか。一子ちゃんは元からお化けでしょ」
「違うでしょ。お化けじゃなくて幽霊」
 瑞穂が慌ててフォローする。

171 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:30:52 ID:Nr28ukPC0
「うううっ、私ってやっぱりお化けで化け物でモンスターなんですね。ずびばぜ〜ん!うええん」
「一子ちゃん、泣かないで。貴子さんも酒に酔ってたから…」
「そ、そうです!私が怖がりなだけです。一子さんは悪くありませんよ」
 我に返った貴子も慌ててフォローする。
 紫苑が優しく微笑みながら慰める。
「一子さん、良いのですよ。幽霊は驚かすのがお仕事ですものね」
「「「「・・・えっ!?」」」」
 貴子とまりやは目を丸くして呆気に取られている。
 ヒソヒソと会話する一子と瑞穂。
「…また、云ってますが…紫苑さん。やっぱり本当にそう思ってらっしゃるようですね…」
「良いんですよ。そこが紫苑さんの良いところなんですから」
「…?」
 皆の反応に首をかしげている紫苑。
「ま、一子ちゃんはビビリの貴子じゃなくてあたしの後ろで応援してくれれば良いわよ」
「うっ、返す言葉がありませんわね…」
「あう…有難うございます。お言葉に甘えまして」
 一子がまりやの後ろに移動する。
「それでは応援させていただきます。まりやさん、ガンバレ!それ行け!突っ込め!」
「…声出さなくて良いから」
「…ハイ」
「さあ、一子ちゃん!アナタを追放した鬼畜貴子を葬るわよ!一子ちゃんのパワーをあたしに預けなさいっ!」
「人聞きの悪いことを云わないでくださいなっ!」
「こういうタイミングでのあたしの強運は凄いわよ〜」
 勢い良くまりやがルーレットを回す!

172 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:31:22 ID:Nr28ukPC0
――カラララララッ……4

【あんっラッキィ〜!黒カードを引きなさい】

「まさか…」

《バナナの皮で滑って転ぶ。持ち金1万ドルを残して全て落とす。落としたお金は次の順番のプレーヤーのモノになる》

「・・・っ!!なにっ!?」
「お〜っほほほっ!なるほど強運ですわねえ、まりやさん。自慢するだけのことはありますわ」
「くっ!」
 まりやが悔しそうに唇を噛む。
「おかしいわね。いつものあたしならこういう場面、いい奴が一発出るんだけど…」
 色々考えて、チラリと一子の方を見るまりや。
「あぁ、私の応援がお役に立てず申し訳ありません」
「……いいのよ」
(もしかすると、一子ちゃんに応援されるとアンラッキーになるのかしら…)
「皆、何故か黒カードが多いね」
「あらあら、いつの間にか私がトップですか?」
 紫苑のところに現在、一子、貴子、まりやの3人分のお金が集まっている。
「一子ちゃん、一子ちゃん。今度は紫苑さまを応援してあげて」
「はい?」
「…いや、その…だって、あたしばかり応援してもらっちゃ悪いしね。ここは平等に…」
「そうですか。では」

173 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:36:18 ID:Nr28ukPC0
 一子が紫苑の背後に移動して、応援を始める。
「紫苑さん、がんばれー」
「うふふ。ありがとう。一子さん」
 紫苑がルーレットを回す。

――カラララッ……6

【大失敗!!プリンに醤油!たまご豆腐と間違える。黒カードを引け!】

「あら…」
「やっぱりっ!」
 密かにガッツポーズをするまりや。

《全員に慰謝料50万ドルずつ渡す…》

「150万ドル吐き出すことになるわね」
「あれ?まだ続きがあるみたいだよ」

《…追徴金10万ドルずつ上乗せすれば白、グレー、黒いずれかのカードをもう一枚引いても良い》

「では、お一人60万ずつお渡しすればいいのですね」
「即決!?カードを引くんですか?」
「だってこのままでは面白くありませんでしょう?」
 紫苑はそう云って全員に60万ずつ渡した。
「それでは黒カードを引きますわね」
「「「「・・・何故、黒!?」」」」

174 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:36:55 ID:Nr28ukPC0
 全員の声がハモる中、黒カードを一枚引く。
 …ピラッ!

《強制奉仕活動!今からゲーム終了まで誰かに膝枕をしてあげること》

「「「「またっ!?」」」」
 ニコニコ笑いながら紫苑は瑞穂の方を向く。
「さっ、どうぞ」
「いや、あのね、紫苑さん…」
「どうぞ」
「その…」
 自分の腿をポンポンと叩きながら、にこやかな顔ではっきりと云う紫苑。
「 カ ・ モ ・ ン ! !」
「・・・・・・・・・」

 嬉しそうに瑞穂を膝枕している紫苑を、羨ましそうに見ているまりやと貴子。
 まりやがギリッと爪を噛む。
「ふむ…どうやら一子ちゃんの不運では紫苑さまのパワーを抑えきれないか…」
 瑞穂は真っ赤になりながら出来るだけ浅く、紫苑の膝に頭を乗せようとしているが、紫苑が力ずくで
自分の太ももに押さえつけている。
「うらやましい…」
 ポツリと漏らす貴子。
 とっても嬉しそうな紫苑の顔。

175 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:41:33 ID:Nr28ukPC0
「ハイ、瑞穂さん。ア〜ン…」
 そう云って、瑞穂の口元に『いか太郎くん』を持ってくる。
「い、いりません…」
「あら、『珍味蛸べえ』のほうが?」
「い、いや、お腹いっぱいですから…」
「んん、残念ですわ」
 膝枕状態の瑞穂にどうしても食べさせたいらしい。
 瑞穂の番。
「な、なんとかまた、この状態から脱出しないと…」
 寝転んだままで瑞穂がルーレットを回す。
「お姉さまっ!頑張ってください!」
 一子が応援する。
「あっ、駄目!一子ちゃん!」
「へっ?」

――カラララッ……4

【青い空、白い雲。白カードです】

「「「「「………」」」」」
 全員が固唾を呑んでカードを見守る。
 ピラッ

《消える飛行機雲、追いかけて旅に出る。全員から旅費10万ドルずつもらう》


176 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:48:47 ID:Nr28ukPC0
「ふむ。瑞穂ちゃんには効かないのか」
「まあ、瑞穂さん。ロマンチックですのね。はい、10万」
「ああっ、お金よりもこの状態を何とかしたかったよ」
「…ある意味、不運とも云えるかも…」
「ちょっと、まりやさん。さっきから何やら挙動不審ですわね」
 貴子がまりやの行動に不審を感じる。
「ん?何のことかしら。それより次は貴子の番よ」
「分かってます!」
 貴子は手に持ったブランデーのグラスを一気にグビッと飲み干す。
「紫苑さまから瑞穂さんを奪いますわよ」
「その意気その意気。さ、一子ちゃん、私たちも貴子を応援しましょ」
 まりやがにやっと笑う。
「ストップ!ビィクワイエットっ!!まりやさん、シャラップ!」
 声援をかけようとした二人を貴子は手を上げて制止した。
「まりやさん、どうも貴女の先ほどからの行動が変です。何だかとても怪しいので応援は遠慮しますわ」
「あらあら、人の好意を足蹴にするなんて心の荒んだ人ね。じゃ、一子ちゃんだけでも」
「黙って!動かないで!ドンウォーリー。応援は一切いらないと云いましたわよ」
 貴子が気迫で、まりやと一子の口を閉じさせる。
 流石は貴子。まりやの悪戯に対する嗅覚の鋭さは一級品である。
「た、貴子さん…。何だか怖いです」
「私は自らの力で運を掴んで見せますわ。この黄金の指でっ!」

177 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:49:20 ID:Nr28ukPC0
 自称、貴子のゴールドフィンガーがルーレットのツマミをつまんだ。
「運なんて無い女が何偉そうに云ってんだか…。じゃ、応援がいらないなら呪いをかけてあげましょ。
ムニャムニャ・・・くたばれ・・・倒れろ・・・堕ちろぉー!!タカコォー!!」
「何云ってるんですかっ!まりやさん!貴女というひとはっ!」

――カラララッ……5

【澱んだ空、生ぬるい風。黒カードです】

 流石は貴子。まりやからの攻撃に対する運の無さも一級品である。
「あらぁ、残念ね〜。貴子」
「………」
 ピラッ

《消える飛行機雲、追いかけてはねられる。お金をぶちまけてしまった!全員に10万ドルずつ渡す》

「ヒヒ、道を歩くときはしっかり前を見て歩きなさいよ。ふひひ」
「・・・・・・・・・」
 無言でわなわなと拳を振るわせる貴子。

178 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:53:15 ID:Nr28ukPC0
「ね、まりや」
「なあに?瑞穂ちゃん」
「さっきから思ってたんだけど、このゲームの雰囲気というか感性というか、とってもまりやチックだよね…」
「へへ。実はコレ、あたしがおじ様にお願いして作ってもらったりして」
「…やっぱり」
「ああああなたっ!貴女が作ったんですの!?このスットコなゲームを!?」
「スットコってなによ。自分が負けてるからって」
「スットコじゃなければヘッポコですわ。センスの悪い駄作!大体、作った本人の貴女も負けているじゃありませんか!」
「センス悪いですってー」
 しかし一子は素直に感嘆している。
「は〜、まりやさんって多才なんですね〜」
「その通りよ、一子ちゃん。一子ちゃんはあたしのことがよく分かってるわね」
 次はまりやの番。
「今度は私が貴女を呪って差し上げますわ。しくじれ〜しくじりなさい〜」
「ふっふ〜ん、無駄無駄。貴子ごときの呪いじゃ屁でもないわ」
 ビール飲みながら全く余裕の表情のまりや。
「まあまあお二人とも喧嘩はやめて、せっかくのお姉さまのお誕生日なのですから」
 一子が仲裁する。
「さあ、ゲームを続けましょう。不肖ヘッポコ幽霊も応援させていただきます。それ、ガンバレ、まりやさ〜ん」
「!!あっ、バカ!一子ちゃん!ダメ!」
「さっきから何を云っているのですか、貴女は」
 慌てて制止するまりやを貴子が見咎める。

179 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:53:53 ID:Nr28ukPC0
「何やら、一子さんの応援が関係するようですが、何かあるのですか?」
「………」
「一子さんに応援されるとツキが落ちるとか?」
「・・・・・・・・・チッ、カンノイイヤツ」
「えええっ!私が応援するとツキが落ちちゃうんですかあー!?」
 驚いて涙目になる一子。
「それで貴女、先ほどから!まりやさんっ!アナタって人はっ!」
 ぎゃぎゃあと両側から喚きたてる二人を、まりやが手を振って黙らせる。
「シャラップ!一子ちゃん、ツキが落ちるって云ってもちょっとだけよ。ほら、瑞穂ちゃんは大丈夫だったでしょ」
「瑞穂さんは元から強運の方ですし」
「うっさい!少々のアンラッキーで負けるようならそれが実力なのよ!」
「ほ〜、なら一子さんがまりやさんを応援しても問題ありませんわね」
「…くっ」
「では一子さん、まりやさんの応援を派手にしましょう」
「で、でも…」
 躊躇う一子に貴子は力強く力説する。
「大丈夫です。まりやさんもその程度、恐れるヘタレではない。どんとこい!カムヒア!とおっしゃってますし」
「わかりました!一生懸命応援しますね」
「ついでに私も応援しますわね、まりやさん。……しくじれ〜しくじりなさい〜堕ちなさい〜」

180 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 14:57:53 ID:Nr28ukPC0
 一子ちゃんと貴子の大合唱の中、ルーレットを回すまりや。
「このぉ、貴子のくせにぃ。……負けるかあぁ!」

――カラララッ……3

【せっかくだから赤の扉を選ぶぜ。グレーのカードを引け】

「来いっ!」
 ピラッ

《めがんて!誰かひとりに所持金の半分を与えなければいけない…》

「あらあら、ご愁傷様ですわね、まりやさん」
 愉快そうな貴子に軽く笑いながら返すまりや。
「ふん。甘いわね、貴子。続きがあるのよ」

《…その代わり油性マジックでその人の顔面に落書きしてよい》

「…えっと、何ですか、コレ」
「はい、貴子。お金」
 まりやは貴子に所持金半分を押し付けると、腕を掴んでグイッと引き寄せた。
「なな、何をするんです」
「ええい、じたばたするなぁ」
 そして油性マジックの蓋をキュポンとはずした。

181 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 15:03:38 ID:Nr28ukPC0
「さっき、あんた、あたしのセンスが悪いと云ったわよねぇ。ほんとにそうか試してあげるわ!」
「いやっ!やめてぇ!」
 キュッキュッキュッ

 貴子の額に書かれる漢字一文字    『 肉 』

「・・・・・・・・・」
「あたしのセンスはどうかね?気に入ってもらえたかね、肉?」
「・・・・・・・・・」
「返事が無い。ただの屍のようね」
「気に入る訳ないでしょう!」

 貴子とまりやが不毛な争いを続けている間、部屋の一方ではもう一つの争いが繰り広げられていた。
「はい、瑞穂さん。ア〜ン…」
「む、無理です。食べられません」
「そんなこと云わずに。さあ」
 紫苑が口に咥えた珍味を膝に押さえつけた瑞穂に食べさせようとしていた。
「「紫苑さま!!」」
 貴子とまりやが同時に突っ込む。
「あら、もう終わりましたか?」
「紫苑さま!こっちに汚れを押し付けて自分だけラブコメしないでください!」
「あまりに手持ち無沙汰だったもので、つい」
「こっちは終わりましたから紫苑さま、次にいってください」
「そうですか。あとちょっとでしたのに。残念ですわ」
 ルーレットに手を伸ばす紫苑。

182 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 15:09:47 ID:Nr28ukPC0
 こそこそ話をはじめる貴子、まりや、一子。
「今の流れは紫苑さまのペース。肉、分かってるわね?」
「誰が肉ですか!勿論わかってますとも。一子さんも存分に紫苑さまを応援してくださいな」
「えっ、で、でも」
「紫苑さまの超強運を打ち破るのは一子ちゃんだけじゃ不足。これは実証済みなのよ。ここは3人が力を合わせないと
紫苑さまのワンサイドゲームになっちゃうでしょ」
「さあ!3人力を合わせますわよ!」
 一子の応援、貴子とまりやの呪い念力の大合唱の中、紫苑がルーレットを回す。
「あらあら、賑やかですこと。皆さん楽しそうですわね」

――カララララララッッ…………8

【あすとろん。グレーカードを引け】

「グレーか」
「流石に手強いですわね」
 皆の注目の中、グレーカードを一枚めくる。
 ピラッ


183 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 15:10:47 ID:Nr28ukPC0
《まほかんた。全員から10万ドルずつ貰う。さらに追加ダメージとして全員の顔面に油性マジックで落書きできる》

「「………強い」」
「これ、どう云うことでしょうか…あら、貴子さんの額…なるほど、マジックで何かを書くんですね、皆さんの額に…」
 紫苑はマジックの蓋をキュポンと外すと、全員の額に文字を書く。
 キュッキュッキュッ

 全員の額に書かれた漢字一文字    『 丼 』

「何だか少しお腹が空いてきましたので」

 貴子の文字は『 肉 丼 』になった。

「・・・・・・・・・」
 手鏡を持ってブルブル震えている貴子。
「紫苑さまのセンス、ばっちりね。そう思わない?肉丼」
「・・・・・・・・」
「返事が無い。ただの屍のようね」
「キ〜〜〜ッ!」


184 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2008/05/18(日) 15:15:37 ID:Nr28ukPC0
 その後、いろいろあって1時間後ゲームは終了。
 優勝は瑞穂になった。
 何だか顔中にキスマークと食べ物のカスがいっぱいこびりついている。
「結局、瑞穂さんが勝ちましたのね」
「ま、そうなるような気がしてたけど。それじゃ、3人の内の誰と濃厚デートするか決めましょうか」
「うふふ、楽しみですわね」
「紫苑さまはもういいでしょ」
「いえ、まだ満腹していませんので。甘いものは別腹ですし」
「どうしてもやんなきゃ駄目かな」
 瑞穂がうんざりしたように訊く。
「「「ダメです」」」
「…んじゃ、一子ちゃんは?」
「「「えっ?」」」
「一子ちゃんも参加したんだから、当然、デート候補にも入るよね」
 全員が空中に浮かんですやすや寝ている一子を見る。
「ん〜、でも、幽霊だし」
「一子さんはいつも瑞穂さんと一緒にいらっしゃるんですから却下でしょう」
「あら、それとこれとは違いますわよ」
「まあ、ゲームキャラでいうと空気とメインヒロインくらい違うわね」
 喧々諤々と酒を片手に議論を始める3人。
 瑞穂は寝ている一子の手を引っ張り、そっと寝室に向かう。
「もう勝手にやってて。僕は寝させてもらうよ、お休み。それからありがと、誕生パーティー」

 3人の議論は、飲み比べで貴子とまりやが轟沈するまで続いた。

 Fin

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